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二次創作をメインにネット小説などを紹介するブログ


by grass_noppara
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金崎玄之丞の憂鬱5(ブリーチ・オリ主モノ)・微修正


如月の頃(雨)

今日、護廷十三隊合同で隊葬が行われた。
浦原喜助と握菱鉄裁による裏切りによる死。
罪人二人は四楓院夜一の逃走幇助により逃走、行方が知れないらしい。
犠牲者は『平子真子』『愛川羅武』『鳳橋楼十郎』『六車拳西』『久南白』『矢胴丸リサ』『猿柿ひよ里』『有昭田鉢玄』他数名の隊士。
そして、『朽木青春』。
瀞霊廷には雨が降っていた。





如月の頃2(雨)

朽木銀嶺隊長に呼び出された。
ここ数日で一気に老け込んだ気がする。
俺はどうだろうか、正直、自分の気持ちが整理しきれていない。
俺にとって朽木青春は手の掛かる妹のような存在だったように思う。
わがままを言われても何故か許してしまう、そんな空気を持つ奴だった。
あれだけ俺の生活をかき回しておいて居なくなる、その事に怒りは感じる。
だが、その怒りを表に出す気力が湧かない。
隊長の用は俺に対して青春の死によって空いた第三席を継ぐようにとの要請だった。
青春が居たならそれにも意味があった気がする。
青春が隊長に、俺が副隊長に、そんな夢を見た覚えだって有る。
答えない俺に隊長は少し悩んだようだがある事実を語り始めた。





如月の頃3(くもり)

先日の隊長の語った話をようやく自分で消化できた気がする。
誰にも語らないし、誰にも知られたくないがこの日記に一つだけ決意を記しておきたい。
青春は死んでいないそうだ。
虚化と言うらしい、要するに青春はあの馬鹿みたいに明るくて我が儘で天真爛漫だった青春は人を喰らう化物に成り果てたそうだ。
そして、首謀者の浦原喜助に連れ去られた、そう言うことになるらしい。
今更、首謀者に復讐したとしても青春は戻らない、ただ、青春が虚として人を襲うのだけは見たくない。
今だから言う、本人の前で絶対に言わないし、誰かの前でも絶対に言わない。
妹みたいな悪友みたいな、色々複雑な感情はあるが、青春は親友だった、親友が間違えたなら正すそれが正しい親友って奴だろう。
もう、凡人だから普通でいいなんて言うのは止める事にする。
アイツの親友が凡人だなんて言わせはしない。
俺はこの手でアイツを止める。





如月の頃4(晴れ)

一晩空けて昨日の日記を読んだら死にたくなった。
なんだあの自己陶酔、恥ずかしすぎる、くそっ、これが黒歴史って奴か。
あれは気の迷いだ、友人が死んだかも知れないって事で気が弱ってたんだ。
消しゴムないのか消しゴム、墨は消しゴムじゃきえねーよ、くそっ。
俺はこの手でアイツを止める(キリッ)ですってよ、笑うわっ!
あぁ、もう、俺らしくない、俺らしくないのは良くない、強くなるのは悪くないけどそりゃ、曾婆ちゃんを看取る為だろうがよ。
悲しむのはいいさ、実際悲しい。
だけどよ、悲しいからって今までの俺じゃなくなったらそりゃ青春のせいで青春と友人だった俺が居なくなるってことじゃねぇか。
あいつはそんなこと望んじゃいねぇ、居ない奴の考えは判らない?
だったら居ない方が悪い、文句があるなら俺の前に出てきて直接言え。
兎に角だ、誰が変わろうと、何が変わろうと、俺だけはあいつのせいで変わってなんかやらねぇ。
平穏な生活も送る、曾婆ちゃんも看取る、あわよくば尸魂界で一緒に暮らす。
ついでに、あくまでついでにだ、青春の嬢ちゃんも止めてやらん事も無い。
明日からもう面倒だな、三席の件を受けて、隊長のサポートして、白哉君の様子も見に行って、夜一さんも居なくなったらしいしな、砕蜂の奴の愚痴も聞きに言ってやらんといけんな。
全く、時間がいくらあっても足らんわこんちくしょうが!





葉月の頃(晴れ)

久しぶりに日記を書く。
やる事多すぎて部屋に戻った途端寝るような日々が長い事続いていた。
第三席になった事での手続きのあれこれに、隊長が居なくなって指揮系統が混乱した隊などにはフォローの人員を送り、席官クラスは本来の担当地区に加えて空白地帯が出来ないように何時も以上の範囲で警戒体勢に就いた。
たまの休みには積極的に白哉君や砕蜂などに会いに行き様子を見てきたりもした。
俺達みたいな比較的混乱が少なかった部隊の努力により護廷十三隊は機能を取り戻しつつある。
全然役に立たなかった隊とかもあるけどな、十一番隊とか。
あんまり役に立たんのでどこぞの隊の席官が十一番隊の隊長に決闘挑んで剣八の名前受け継いで改革に励んだりなんて事もあった。
あそこ脳筋ばっかなので大変だろうなぁ、大変そうなんで技術開発局特製の栄養ドリンク送っておいた。
〇に涅というラベルの奴だ、滅茶苦茶効果あって三日は眠くならないので忙しい時は俺も愛飲している。
なんかやばい成分でも入ってんだろうか?
まぁ、あれだ背に腹は変えられんという奴だ、一応、効き過ぎて怖いので使用は自己責任でと書付も送った。
他の隊の面子も変わって少しだけ寂しくなった気もするが、白哉君も真央霊術院に入り春には六番隊に入隊する事だろう。
今はただ真面目に仕事をこなす事だけを考えておけばいい、そう思う。





長月の頃(晴れ)

仕事終わりに夜道を歩いていると砕蜂に捕まった。
こいつもストレスが溜まってるんだろう、だが、酒瓶をどんと置いて飲めは無いと思う飲めは。
正直な話、中学生くらいにしか見えん砕蜂に酒を勧められても違和感がなぁ。
尸魂界じゃ見た目と年齢が違う場合が多いなんてありがちなのは判ってるんだが……
それに何より、胸が寂しい、一緒に酒飲んでても楽しくない。
そんな事を思ってたら、膝がちくっとして何時の間にか蝶だか蜂だかの模様が付いていた。
あ、なんか懐かしい、砕蜂のこの目は次はコロスの目だ、青春の嬢ちゃんがよくしてたなぁ。
そんなこんなで色々話した、砕蜂の出が下級貴族だとか、夜一さんラブだとか、兄弟はみんな死んだとか、夜一さん超ラブだとか。
まぁ、意訳はあるが大体そんな感じ、俺としてはあの人は……正直よく判らん。
青春の嬢ちゃんをあんな事にした下手人を逃がした事を恨めばいいのか、それともあの胸を惜しめばいいのか。
冗談は兎も角、あの人だけを見る限りああいう陰湿な事に手を貸すような人間とは思えないんだよな。
砕蜂もだから、愚痴に見せかけて多少は事情を知る俺に一緒に連れて行って欲しかった、そういう心情を吐露してるんだろうよ。
本人的には気付いてないんだろうけど、じゃなけりゃ仮にも夜一さんの一味に友人を奪われた俺にこう言う事は言えんわなぁ。
ハイハイ、ツンデレツンデレ、まぁ、この様子見る限り、夜一さんも一緒に連れて行ってやれば良かったもんのをと思わなくも無い。
でも、まぁ、本題はこれじゃないのはいくら凡人で馬鹿な俺にだって判る。
砕蜂の本題は簡単に言えば協力要請という事になるのだろうか?
二番隊、そして隠密機動を掌握して夜一さんを探し、自らの手で捕らえたいらしい。
俺は青春の嬢ちゃんと親しかった関係で四貴族の朽木家とパイプがある。
下級貴族である砕蜂が権力を手にしようとしたらある段階で以前からある権力の後押し必要とか考えたんだろうな、個人的には無くてもやれるとは思うんだが。
ま、そう言う訳で俺に口を聞いて欲しい、そういう相談だ。
朽木家は家柄もそうだが実力主義な部分もある。
砕蜂に力と意思があれば俺が口を利くことで後ろ盾になってくれる可能性はある。
俺個人としては、こいつに協力するのは吝かではない。
口利きだけはしてやるとしよう、機会を生かせるかどうかは砕蜂次第だけどな。





卯月の頃(くもり)

いい加減、青春の嬢ちゃんと一緒に仕事してた時間よりずっと長い時間一人で仕事してる。
砕蜂は朽木家の援助もあり、二番隊の隊長、そして隠密機動総司令官に就任した。
実力も上がったし、威厳を見せると言う事にも馴れて来たらしく颯爽と瀞霊廷内を歩いてるのを見かける。
なかなか砕蜂を見る周囲の視線も熱いものが混ざっている、百合で夜一至上主義だと言う事も知らずになぁ、何故か人気あるんだよアイツ。
先日、我が隊である六番隊の副隊長が引退した。
それに伴い、朽木白哉が副隊長に就任する、俺としては正直やっとか、そう思っていたりする。
実の所、俺にも副隊長にならないかという打診はあった。
だが、そんな実力は俺にはないし、青春の嬢ちゃんに対するケジメを付けるまではせめて朽木の人間のサポートをしていたいと言う気持ちもある。
しかし、白哉くんは間違いなく朽木家の人間だわ、強いの何の、正直自信がなくなる。
鬼道では、まぁ俺の方が一日の長がある、しかし他の斬拳走に関しては青春の嬢ちゃん以上だ。
嬢ちゃんが居なくなって少しだけ笑顔が減った気がするけどな、まぁ、しょうがない事だろう。
そういえば夜一さんとも仲が良かったんだっけ、無理もないか。
なんにせよ、白哉くんが副隊長になった事で俺の仕事にも少し余裕が出来た。
そろそろ、俺も次のステップに進んでもいいんじゃないか、そう思う。




卯月の頃2(くもり)

斬魄刀と言うのは最初は封印状態にある。
名を呼ぶことで斬魄刀はより強い個性を持ち、特殊な固有の能力を発揮するようになる、これを尸魂界では始解と呼んでいる。
下級の死神は斬魄刀を持たず、浅打と言う名の無い斬魄刀を与えられる事になる。
ちなみに席官に任命されるには始解が最低条件になってたりもする。
だが、斬魄刀の封印は始解で全て解けているわけじゃない。
卍解というのが斬魄刀の戦力を完全に引き出す為の手段であり、隊長クラスはすべからくこれをマスターしてるそうな。
これをモノにすれば10倍くらい強くなるそうだ、と言うわけで今日は卍解の特訓をしてきた。
卍解する為には斬魄刀と現実世界で対話しないといけない、その為に斬魄刀を具象化し現実世界に呼び出さないといけない。
その上で、斬魄刀の望む形での試練に打ち勝ち屈服させれば卍解を得る事ができる。
斬魄刀の具象化、現実世界への呼び出し、この言葉を聞いて思い浮かぶ事が無いだろうか?
俺の斬魄刀、玄海嬢ちゃんは既にこちらの世界で限定的にだが意志を示す事が出来ている。
始解状態の黒玉、その操作は斬魄刀の意志で行われている。
これを取っ掛かりに具象化を実現しよう、そう考えている。




皐月の頃(くもり)

流魂街の外れで瞑想していたら白哉くんが現れた。
今日は任務も無かったはずだが、休日に瀞霊廷内から出るなど珍しいと思って見ていると、どうやら人と待ち合わせをしていたようだ。
驚く事に待ち合わせ相手は女性、しかも美少女、やばい、久しぶりに明るいネタ発見だな。
どうもここしばらくシリアス続きで精神的にすさみまくってたのからなぁ。
俺は神速で玄海嬢ちゃんを解放して細心の注意の元、センサー兼送信端末を近くまで飛ばした。
ちなみに端末の召喚から設置までの時間は0.5秒、最高新記録だ。
俺も成長と言うことさ、こんなんで成長とか実感したくないがなぁ。
それは兎も角、このお嬢さんと白哉君だが、どうやら流魂街での虚討伐の折知り合って、お礼がしたいのでという感じだ。
それをネタにデートにこぎつけたという感じだろうか?
真面目な顔してやる事やってるな、白哉君、君の事を見直した。
そうか怪我はないかとかぶっきらぼうに言ってますが頬が赤いのを隠せてません、くっ、砕蜂といい白哉くんといいツンデレばっかだよ俺の知り合いには。
しかし、会ってる嬢ちゃんの胸はかなりささやかだなぁ、青春の嬢ちゃんの影響かそういうのが趣味なんだろうか?
男なんだからもう少しこう、夢と理想を持ってても良いと思うんだが。
「それは夢でも理想でもないと思う」
いやいや、男にとって充分夢ですよ、あの中にはびっしり理想と夢がつまってるんだ。
「……無い」
大丈夫、成長するってそのうち。
とまぁ、こんな感じで具象化に成功しました。
と言うか、いくら俺でも流石にこれは無いと思うんだ。





皐月の頃2(晴れ)

酷く納得行かないが、具象化に成功した。
何であのタイミングと聞いたら、興味があったからとか言われた。
そんなこと言われてもなぁ。
しかし、この玄海嬢ちゃんが俺に与える試練ってのが想像付かん。
殴りあうのとか、無理じゃね、そもそも裸じゃねーかよ、某所が無さ過ぎて全然そういう感覚湧かないけどな。
一人で考えててもしょうがないので卍解とかやるための試練ってどんなのか直接聞いてみた。
その瞬間、黒い水、おそらく斬魄刀玄海そのものがドーム状に広がった。
ただ全部受け止めて受け入れるだけでいい、そう言って笑う嬢ちゃんが初めて背筋の冷える恐ろしい存在にこの時思えた。
試練には三日かかった。
俺はただ、感情の籠もった彼女自身(と言っても斬魄刀の黒いのの事だ、人格を疑われると困るのでここ重要)を受け止めるだけの三日間だった。
いや、世界が変わったね、玄海嬢ちゃん予想以上に怖いでヤンの。
具体的に言えば……
『うわきものうわきものうわきものうわきもの……』
だったり、
『あの女あの女あの女あの女……』
だったり、
『胸が大きいからって胸が大きいからって胸が大きいからって……』
だったりな、女の本音ってこえーよ怖すぎる。
こんなん、受け止めて受け入れるだけとか難しすぎだろうJK。
この三日、この三日はほんと受け入れる為の心の準備の期間でした。
全部終わった後、にっこり笑って言った言葉が忘れられねー。
『浮気したら相手の女殺します』
お願いです、照れくさそうにそんな初々しい恋人って感じの笑みで怖い事さらっと言わないで下さい。
なんか、卍解の契約(?)と結婚式の誓約とごっちゃにしてないか?
俺的にもう少し……なぁ?
しかし、このお嬢さん解放状態の斬魄刀の操作権半分持ってるんだよなぁ。
さっきの言葉とか、全然洒落になってねーよ、洒落……だよな?
俺はもしかしたら、一生結婚とか彼女とかと縁はないかもしれん。
斬魄刀を嫁に持つ男、二次元嫁とかわらねーよ、脳内彼女かよ、笑えねーよ、まんまじゃねーか。
力を得るために男は呪いを受けたとか字面だけだと厨ニ過ぎるわっ!
目が覚めたとき、何故か白哉くんが近くに居た。
何か恐ろしいものを見る目で見られた、もしかしたら全部悟られてるのかもしれない。
そりゃ、恐ろしいものを見る目で見られるか、まさに三十越えて魔法使えるようになった男とか思われてんだろうな。
自分で自分が恐ろしすぎる……








 金崎玄之丞 六番隊第三席の頃の日記より一部抜粋。










 朽木白哉の憂鬱



 私の姉は実に破天荒で、貴族や掟より、人や思いなどを大切にする人間だった。
 そしてその姉が選んだ人間は口が悪く、容姿も優れず、それでも人に垣根を作らない男だった。
 優秀な死神ではあるが流魂街の出身とあっては結ばれる事はない、掟ではそうなっている。
 だが、家族は皆、姉の破天荒さや心根を愛していた。
 お爺様は内々にその男、金崎玄之丞を一族に迎える為に骨を折っていた様だった。
 私も、あけすけな金崎玄之丞と言う男を気に入っていたのは間違いない。

 それまで、私達を見る目は恐怖や打算、そして畏怖ばかり、ああいう目で私たちを見る人間など家族か同格の家柄のもの以外では初めてだった。
 だから、私は彼を義兄と呼ぶのも吝かではない、そう思っていた。

 そんな折、姉上が死んだ。
 合同の隊葬で死体の無い棺を前にした義兄は普段通りの不機嫌な顔で、しかし姉上が最も好きだった目の光が失せていた。
 誰でも分け隔てなく見つめるあの目が好きだ、そう言っていた。
 それが失われていた。
 それに追い討ちをかけるかのように義兄が我が家の葬儀への参列を拒否されたと言う噂を聞いた。
 姉上が生きていたのなら我が家への関わりを認めるが、そうでないのなら無関係。
 そう言いたいのだろう。
 義兄はどれほど気落ちしているか、それを思うと申し訳なく、そして悔しく思う。

 しかし、義兄は私が思っていたよりずっと強かった。
 私より何倍も辛かったはずだったのにそれを全く見せず、前以上に仕事をこなしていると噂を聞いた。
 そして、以前よりずっと忙しいはずなのに時間を作って私の様子を見に来て、爺様の事を心配してあれこれ世話を焼いていると聞いている。
 私は不思議に思い、悲しくないのかと聞いた事もあった。
 そうしたら決まって……

「青春の嬢ちゃんの為に泣いてやる奴は沢山居るしな、そんなんだと嬢ちゃんもおちおちゆっくり休めないだろ? ま、俺一人分くらいはゆっくり休ませてやろうと思ってな。死んだ後も嬢ちゃんのフォローとは笑えねぇよ、全く」

 そう言って笑うのだ。
 強い人だ、純粋にそう思う。


 時が流れて私も死神として働くようになった。
 働いてみて初めて、義兄が仕事上の仲間として得がたい存在だという事がよくわかった。
 自分がやりやすいようにではなく、仲間がやりやすいように動く、そういう人間だ。
 戦いでも誰かの援護をするのが得意だと聞いている。
 爺様が言うには、姉上を援護するのが一番得意だったのだと、そう言っていた。

 当然、副隊長の席が空いた時、義兄がその座に就くのだと思っていた。
 しかし、義兄はそれを拒否し、私を推薦した。

「俺は嬢ちゃんに第三席の役を貰ったからな、もう充分だ。白哉君、君が副隊長になれ、そしたら俺もゆっくり出来るしな」

 義兄は姉上が大切にしていたものを同じように大切にしている。
 きっと私の事もそうなのだろう。
 いつか恩を返せればいい、そう思う。

 休日、義兄が流魂街へ出て行くのを見てつい、後をつけてしまった。
 追っている内に偶然、以前助けた緋真という女性と会った。
 見回りかと問われたのでついそうだと言ってしまった。
 その後、ついつい長話をしてしまった。
 全く、馴れない事をするからこんな事になる。
 結局、この日は義兄を見つけることは出来なかった。

 翌日、義兄が無断で仕事を休んだ。
 このような事は一度も無かった、何かあったのだろうか?
 そう思い、先日、兄を見失った所まで向かってみる事にする。
 向かった場所にあったのは光を飲み込む黒い巨大な半球の姿だった。
 肌に感じる霊圧は間違いなく義兄の、そして卍解特有のもの。
 何時の間にと言う思いがあり、やはりと言う思いもあった。

 しかし、そんな感傷はその半球に触れた瞬間に微塵に砕け散った。
 これはただの半球ではない、義兄の斬魄刀そのものだ。
 そして、この斬魄刀には担い手でない私にははっきりとした事を感じ取る事はできないが強い思念が込められていた。
 その思念が問題だ、この半球は拒絶の、負の感情によって支配されている事だけはわかる。
 呆然としているうちにそれは渦を巻くように一転に収束していく。
 収束する点、義兄はそれを身の内に全て飲み込みこちらを見た。
 あれを飲み干して、それでも苦笑とはいえ笑みを浮かべてこちらを見ることができる義兄。
 あの人は一体、何をしようとしているのだろうか?
 ただ、姉上の残したモノを蔑ろにする事だけはない、その事だけは確信していた。





 了
by grass_noppara | 2009-02-15 12:57 | 駄文